カーボランダムとは

カーボランダム版画の版
写真:カーボランダム版画の版洗浄(ブリッソン画伯)
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集 より

特徴は?

カーボランダムは、版画技法のひとつです。木版画と違い、原版を彫らずに制作されます。版に特殊な混合物を塗ってボコボコとした起伏を作り、その凹凸(おうとつ)部分に彩色、プレスして用紙に刷るという技法です。作品はレリーフ状で、この立体感がカーボランダム版画の大きな特徴です。

原理は?

カーボランダムとは炭素とケイ素が結合した物質(炭化ケイ素)です。「硬い、アルカリや酸に侵されにくい、熱に強い」といった特長があります。

どうやって作られるの?

カーボランダムを細粒状にしたものとプラスチック樹脂などを混ぜて版に塗ります。金属版やプレキシガラスなどが版に使われますが、塗られた部分は乾燥すると非常に硬くなって表面がデコボコのレリーフ状になります。そしてこの版にインクを塗って用紙に刷りとれば作品ができるというわけです。

どうやって刷るの?

刷るときは、プレス機で強い力を加えて(圧力17トンまで)紙を押さえ込みます。紙はあらかじめ霧吹きなどで湿らせて柔らかくしておきます。プレス時に凹凸(おうとつ)で破れないような厚い紙(600g/m2)がよく用いられます。プレス効果で、用紙には原版のかたちどおりの凹凸(おうとつ)と、色が付きます。さらに、刷り上がったあとに手で彩色されたり、コラージュが施されたり、プレスと彩色を何度もくり返して仕上げられたりなど、制作工程の違いによって作家や作品のオリジナリティーが生み出されます。

カーボランダム版画の刷り
写真:カーボランダム版画の刷り(ブリッソン画伯)
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集 より

鑑賞のポイント

凹凸(おうとつ)による立体感が大きな魅力であるのは言うまでもありません。インクは凸部にも凹部にも塗布することができますので、色の濃淡が楽しめます。非常に変化に富んだ表現と構成による独特の世界感も魅力です。

歴史

画家のアンリ・ゲッツ(1904-1989)が、従来の版画の難しさを克服するために新たな技術を研究し、1960年代に完成させました。ミロ(1893-1983)、クラーベ(1904-1989)をはじめ、パパー、コワニャ、エレノン、ブリッソン、コタボ、ヴァイデリッヒほか多くの作家がカーボランダムという革新的な版画技法を用いて作品を制作しています。

参考

「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集

文責

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