油彩画とは

シャガールのパレット(油彩) ニューヨーク・メトロポリタン美術館所蔵
写真:マルク・シャガール「パレット」1974年 ニューヨーク・メトロポリタン美術館(撮影:mayumi_nihonbookart)

特徴

一般的に「油絵(あぶらえ)」と呼ばれています。顔料を亜麻仁(あまに)などの植物の種から採取された油で溶いて、その絵具をテレピン油という精油で希釈して描かれます。顔料は岩石や鉱物などの粉です。それを溶く油は亜麻仁(あまに)のほかに・くるみ・けしなどが一般的です。どの油も酸化乾燥すると固定します。鮮やかな発色はもとより、細部の表現や、ぬり重ねによる重厚な表現ができるのが油絵の特徴です。

鑑賞のポイント

絵の楽しみ方のひとつとして、その作品がもつ肌合いがあげられます。これはマチエールとよばれるもので、画家がとても大切にするものです。絵肌ともいわれます。油絵はぬり重ねの表現ができますから、重厚感や絵具の盛り上がりが楽しめるでしょう。また、油彩画が描かれるのは、布(おもに麻や木綿)や木などです。それらの素材が違えば印象も変わりますので、布や木などの素材と絵具とのふれあい方も見所です。

歴史

油彩は、亜麻仁油の産地だったフランドル地方(現在のベルギー)が発生で、ヤン・ファン・エイク(1390~1441)という画家が兄のフーベルトとともに完成させたといわれています。
油彩技法を確立した画家ヤン・ファン・エイクの作品_アルノルフィーニ夫妻
写真:ヤン・ファン・エイク「アルノルフィーニ夫妻」1434年 板に油彩 ロンドン・ナショナルギャラリー(撮影:mayumi_nihonbookart)
顔料に卵を混ぜて描く「テンペラ画」に比べると、油彩画は絵具が乾燥するのに時間がかかります。しかし透明感があって、グラデーションなどの豊かな色調表現も可能なことから、15世紀以降のヨーロッパでは、テンペラ画に代わる技法となりました。
日本で油絵が本格的に知られるようになったのは19世紀、明治初期です。鎖国をしていた日本では長い間外国の文化を学ぶことが厳しく禁止されていたため、油絵の広まりが遅かったのです。開国後まもなくイギリスの報道画家として来日したチャールズ・ワーグマン(1832-91)に、五姓田義松(ごせだ よしまつ)が入門して油彩画を学び始めたのが1865年、そして高橋由一(たかはし ゆいち)が弟子入りしたのがその翌年でした。日本での歴史が二世紀にも満たない油絵は、歴史の長い日本画に対して、「新画」と呼ばれることもあります。

参考:

「岩波 西洋美術用語辞典」益田朋幸・喜多崎親 編著、岩波書店;
「カラー版 絵画表現のしくみ」 森田恒之 監修、美術出版社;
「美術品販売手引書」 ほるぷ営業企画部 編集、ビジョン・ヌーベル社広報部 監修

文責

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