リトグラフとは

リトグラフって何ですか?

リトグラフは版画技法のひとつです。 石版画(せきはんが)、 リトグラフィー(フランス語)とも呼ばれます。

石版ということは、石を彫って作るの?

リトグラフは原版を彫りません。版画といえば、浮世絵でおなじみの木版画(もくはんが)を思い出されるかもしれません。木版画は、木の板を彫刻刀で彫りますね。彫ったところは凹となりインクが付かないので、刷ると白い部分になります。逆に、彫らずに残したところは凸となりインクが付きますので、刷ると紙にその部分のインクが移ります。リトグラフは彫る代わりに、化学処理をすることでインクが付くところと付かないところを作ります。

彫らずに、なぜ版画ができるの?

化学反応と、油と水とが混ざらない性質を利用して、版にインクが付くところと付かないところを作ります。

どうやって作るの?

油性のリトクレヨンや絵具で原版に直接絵を描きます。そのあと薬品を用いてその絵が版に定着するよう処理をして版が作られます。手間がすごくかかります。

リトグラフができるまで

ご参考までにディスカバリーチャンネルの動画です。制作されているのはシンプルなモノクロ作品です。



原版は石?

リトグラフの「リト」とはギリシャ語の「石」を意味するlithosに由来しています。 「グラフ」はギリシャ語の「描く、記す」を意味するgraphiaが語源です。つまり「石に描く」ということです。ただし、その石は何でもいいわけではありません。リトグラフに使われるのは石灰岩です。

なぜ石灰岩?

石灰岩にはスポンジのように無数の微細な孔(あな)あって、水分や油脂を受け付けやすいという性質があります。また石灰石のカルシウムと薬品の化学反応を利用して絵の部分を定着させることから石灰岩が適しているのです。

どこの石灰岩?

伝統的なリトグラフではヨーロッパの石が使われます。代表的なのは南ドイツ・ゾルンホーヘン産のものです。18世紀末(1798年)にリトグラフの技法を発明したドイツ人のアロイス・ゼネフェルダーが、 南ドイツで採れる石を用いたのが始まりです。

石灰岩以外でもリトグラフが作られるの?

現在では多様な版材が使われるようになりました。石は重い・値段が高い・磨くのが大変、という理由から亜鉛(ジンク)版やアルミ版などの薄い金属版が主流となりました。

リトグラフの特徴は?

白黒ではない、多色リトグラフの場合は、色の数と同じだけの版が必要です。つまり、15色使いたいと思ったら15版必要になります。非常に正確な目印をもとに何色も色が重ねられますので明るくてカラフルな作品となります。装飾性に優れていて油絵とは違った趣が楽しめるのが特徴です。

刷られる数は?

1つの作品で制作される数は限られていて、何枚刷るかは通常作家側が決めます。50部しか作らないものから300枚前後と様々ですが、あくまでも限定刷りですので刷り終了後は石版上のデッサンを消してしまいます。

限定数(エディション番号)とは?

刷りあがった作品は、一枚一枚出来具合がチェックされ、品質が保証されると番号が記入されます(エディション番号)。分数の場合は、分母が作品の限定数分子が刷り番号です。しかし、刷り番号は必ずしも刷り順と一致していません。また、技術的にも早い番号のほうが刷り質が優れているということはありません。

限定番号が数字ではなく文字の場合もある?

画家は制作料を版元から受け取るとともに、若干の作品を保有できることになっています(作家保存版)。通常は、総刷り数の約5%です。限定番号の代わりに、E.A.またはEpreuve d' Artiste (エプルーブ・ダルティスト/フランス語)と記入され一般にEA版と呼ばれています。E.A.ではなくA.Pと記入されることもあり、これは Artist's Proof(アーティスツ・プルーフ/英語)の略です。

EA版やAP版のほうが価値がある?

版元で刷り番号入りの作品が売り切れた場合、作家からこのEA版やAP版を買い取り市場に出すことがあります。たまに「EA版は価値がある」と言って販売している業者もいるようですが、作品の品質も価値も番号入りのものと変わりません。実際、私達の取り扱ったオリジナルリトグラフの中でEA版と限定番号版との違いから価格に差をつけて売ったことは一度もありません。H.C.と記入された作品もありますが、これは Hors Commerce(オル・コメルス/フランス語)の略で非売品という意味です。美術館への見本など非売目的で一定枚数刷られますが、こちらもEA版と同じように市場に出されることがあり、限定番号入りの作品と品質も価値も同じです。