美術品まめ知識
油彩画とは
油彩画とは、油を用いた絵具を使って描かれた絵画です。
「油絵」と呼ばれることも多く、鮮やかな発色、豊かな絵肌、塗り重ねによる奥行きある表現が大きな魅力です。このページでは、特徴や歴史、鑑賞のポイント、飾る場所の注意点など、分かりやすくご紹介します。
油彩画と油絵の違い
油彩画と油絵は、一般にはほぼ同じ意味で使われます。美術の分野では「油彩画」、日常的には「油絵(あぶらえ)」と呼ばれることが多いです。
特徴
水彩は水で絵具を溶きますが、油彩は油を用います。油彩画は、色のもととなる顔料を「乾く油(乾性油)」で練り、必要に応じて溶き油で薄めながら描き進められます。
顔料は、岩石や鉱物などを細かく砕いた粉末のほか、化学的に合成されたものもあります。混ぜ合わせるのには、亜麻仁(あまに)・くるみ・けしなど、植物の種から採取された油が一般的に使われます。これらの油と顔料は光の通り方が良く似ているため、光が絵具の層を通り抜け、透明感のある澄んだ色が生まれます。
水彩は水が蒸発して乾きますが、乾性油は空気中の酸素と反応してゆっくりと固まります。この乾燥の遅さが、色の濃淡や明暗を滑らかに描き込むことを可能にします。透明感から重厚感、緻密な描き込みから大胆な筆致まで、幅広い表現ができるのが油彩画の特徴です。
歴史
油彩画は、亜麻仁油の産地だったフランドル地方(現在のベルギー)で大きく発展し、画家ヤン・ファン・エイク(1390~1441)が兄のフーベルトとともに完成度を高めたと言われています。
顔料に卵を混ぜて描くテンペラ画に比べると、油彩画は乾燥に時間がかかります。その一方で、色の重なりを活かした表現にすぐれ、透明感のある層や豊かなグラデーションを生み出しやすいことから、15世紀以降のヨーロッパで広く普及しました。
日本での油彩画の歴史は浅く、本格的に知られるようになったのは19世紀、明治初期のことです。鎖国体制下の日本では海外からの情報が厳しく制限されていたため、西洋の油彩技法が広く普及するには時間がかかりました。
開国後まもなく、イギリスの報道画家として来日したチャールズ・ワーグマン(1832-91)に、五姓田義松(ごせだ よしまつ)が入門して油彩画を学び始めたのが1865年、高橋由一(たかはし ゆいち)が弟子入りしたのがその翌年でした。
海を渡ってもたらされた油彩画は、やがて「洋画(西洋画)」とも呼ばれ、それまで日本で独自に培われてきた伝統的な画法や素材を用いた作品と区別されるようになりました。
油彩画の鑑賞のポイント
油彩画の鑑賞ポイントの一つとして、その作品がもつ肌合いがあげられます。これはマチエールとよばれるもので、画家がとても大切にするものです。絵肌ともいわれます。
厚く盛り上げて力強い立体感を見せる作品もあれば、平滑に仕上げて透き通るような光を感じさせる作品もあります。自然光や照明の当たり方によって見え方が変わるのも、油彩画のおもしろさです。
さらに、油彩画は布地のキャンバス布(おもに麻や木綿)だけでなく、板などに描かれることもあります。絵を描く土台を「支持体」と言いますが、その素材の違いによる印象の変化も鑑賞の楽しみです。
油彩画を飾る際の注意点
油彩画を美しい状態で長く楽しむためには、飾る環境にも気を配ると安心です。油彩画は耐久性の高い芸術作品ですが、長い年月の中で絵具に割れやヒビ、縮みが生じることがあります。
これは油絵具の乾燥過程の性質や、温度・湿度の変化によるキャンバス地の伸縮などが主な要因です。そのため、極端な乾燥や湿気を避け、エアコンの風が直接当たる場所や直射日光の当たる場所は避けて飾るのがおすすめです。
なお、経年変化による細かなヒビは、油彩画ならではの歴史的な味わいとして愛される側面もあります。
まとめ
油彩画は、色の重なりや絵肌の変化を通して、多彩な表現を楽しめる絵画です。
技法の背景や見どころを知り、身近な場所に飾って愛着を深めることで、楽しみはいっそう広がります。油彩画ならではの魅力を、ぜひゆっくり味わってみてください。
参考文献
「岩波 西洋美術用語辞典」 益田朋幸・喜多崎親 編著、岩波書店
「カラー版 絵画表現のしくみ」 森田恒之 監修、美術出版社
「美術品販売手引書」 ほるぷ営業企画部 編集、ビジョン・ヌーベル社広報部 監修
文責
nihonbookart-mayumi
号数とは
号数とは、油彩画などの絵画で用いられる、キャンバスや板などの支持体の大きさを表す目安です。
同じ号数でもF・P・Mといった種類によって形が異なり、実際の寸法も変わります。このページでは、絵画の号数の意味、版画サイズとの違い、測り方の注意点、フランスサイズと日本サイズの寸法表まで分かりやすくご紹介します。
絵画の号数とは
絵が描かれる土台となるものを、支持体(しじたい)といいます。代表的な支持体には、キャンバスや板などがあります。
油彩画などでは、この支持体の大きさを表す目安として「号」という言葉が用いられます。「この画家の作品は1号あたりいくら」といった表現で耳にされたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
号数は、作品の大きさを感覚的に把握しやすい便利な表記です。ただし、号数だけで正確な縦横サイズが決まるわけではなく、F・P・Mなどの種類によって形が異なります。
版画のサイズも号数で表すの?
版画のサイズ表記には、原則として「号」は用いません。版画では、画寸やシートサイズをセンチメートルで表すのが一般的です。
ただし、号数の方が大きさをイメージしやすいというお客様も多くいらっしゃいます。家の広さで「100平方メートル」よりも「約30坪」と言われた方が分かりやすい、という感覚に近いかもしれません。
日本ぶっくあーとでも、ご相談の際には「だいたい10号ぐらいの大きさですね」といった形で、目安として号数に置き換えてご案内することがあります。
F・P・Mとは
号数は、1号、2号、3号と数字が大きくなるにつれてサイズも大きくなります。ただし、同じ号数でもF・P・Mといった種類があり、「同じ号数なのに大きさが違う」ということになります。
一般的に用いられるのは、F・P・Mの3種類です。「F2号」「P2号」「M2号」のように表記されます。基準となる長辺の長さは同じでも、短辺の長さが変わるため、同じ2号でも形や面積が異なります。
Fは Figure(人物)、Pは Paysage(風景)、Mは Marine(海景)に由来します。ただし、人物画だからF、風景画だからP、海の絵だからMというわけではありません。
また、すべての作品が号数表の寸法にぴったり一致するわけでもありません。画家自身が支持体を制作する場合や、作品のイメージに合わせて特注する場合もあります。さらに、フランスサイズと日本サイズのように、国や規格によって寸法に違いがあります。
なお、美術館や学術的な記述では、「号」ではなくセンチメートルやインチで寸法が記載されるのが一般的です。
号数の調べ方
絵の号数を調べるときは、キャンバスや板など、支持体の長辺を基準にします。縦長の作品でも横長の作品でも、「長い方」の寸法を見ます。たとえば、「長い方」が約24cmでしたら、おおよそ2号に相当します。
額縁に入っている作品の場合、見えている部分が実際の画面より小さくなっていることがあります。額のデザインにもよりますが、作品の端が数センチほど隠れている場合もあります。
そのため、額装された状態で寸法を見る場合は、「見えている部分」と「実際の支持体サイズ」が異なる可能性を考慮する必要があります。
洋画号数寸法表
以下に、フランスサイズと日本サイズの洋画号数寸法表を掲載します。作品サイズを確認する際の目安としてご参考になさってください。
フランスサイズ(cm)
| 号数 | F | P | M |
|---|---|---|---|
| サムホール | 22×16 | 22×14 | 22×12 |
| 2 | 24×19 | 24×16 | 24×14 |
| 3 | 27×22 | 27×19 | 27×16 |
| 4 | 33×24 | 33×22 | 33×19 |
| 5 | 35×27 | 35×24 | 35×22 |
| 6 | 41×33 | 41×27 | 41×24 |
| 8 | 46×38 | 46×33 | 46×27 |
| 10 | 55×46 | 55×38 | 55×33 |
| 12 | 61×50 | 61×46 | 61×38 |
| 15 | 65×54 | 65×50 | 65×46 |
| 20 | 73×60 | 73×54 | 73×50 |
| 25 | 81×65 | 81×60 | 81×54 |
| 30 | 92×73 | 92×65 | 92×60 |
| 40 | 100×81 | 100×73 | 100×65 |
| 50 | 116×89 | 116×81 | 116×73 |
| 60 | 130×97 | 130×89 | 130×81 |
| 80 | 146×114 | 146×97 | 146×89 |
| 100 | 162×130 | 162×114 | 162×97 |
日本サイズ(cm)
| 号数 | F | P | M |
|---|---|---|---|
| 0 | 17.9×14.0 | ||
| 1 | 22.1×16.6 | ||
| サムホール | 22.8×15.8 | ||
| 2 | 24.0×19.0 | ||
| 3 | 27.3×22.1 | 27.3×19.1 | 27.3×16.1 |
| 4 | 33.4×24.3 | 33.4×22.0 | 33.4×19.1 |
| 5 | 35.2×27.0 | 35.2×24.0 | 35.2×22.1 |
| 6 | 41.0×31.9 | 41.0×27.3 | 41.0×24.3 |
| 8 | 45.5×37.9 | 45.5×33.4 | 45.5×27.3 |
| 10 | 53.0×45.5 | 53.0×41.0 | 53.0×33.4 |
| 12 | 60.6×50.0 | 60.6×45.5 | 60.6×41.0 |
| 15 | 65.2×53.0 | 65.2×50.0 | 65.2×45.5 |
| 20 | 72.8×60.6 | 72.8×53.0 | 72.8×50.0 |
| 25 | 80.4×65.2 | 80.4×60.6 | 80.4×53.0 |
| 30 | 91.0×72.8 | 91.0×65.2 | 91.0×60.6 |
| 40 | 100.0×80.4 | 100.0×72.8 | 100.0×65.2 |
| 50 | 116.7×91.0 | 116.7×80.4 | 116.7×72.8 |
| 60 | 130.3×97.0 | 130.3×89.5 | 130.3×80.4 |
| 80 | 145.5×112.2 | 145.5×97.0 | 145.5×89.5 |
| 100 | 162.1×130.3 | 162.1×112.2 | 162.1×97.0 |
まとめ
号数とは、油彩画などの絵画サイズを把握するための目安です。同じ号数でもF・P・Mによって縦横の比率が異なり、フランスサイズと日本サイズでも寸法に違いがあります。
版画では通常、号数ではなくセンチメートルによる画寸やシートサイズで表記しますが、作品の大きさを感覚的に知る目安として号数を参考にすることもできます。
作品を選ぶ際は、号数だけでなく、実際の画寸や額寸、飾る場所とのバランスもあわせてご確認ください。
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リトグラフとは
リトグラフは石版画(せきはんが)とも呼ばれ、油と水が混ざらない性質を利用して刷られる版画です。
このページでは、その仕組みや特徴、限定数、EA版の意味などを分かりやすくご紹介します。
リトグラフとは
リトグラフは版画技法のひとつです。版画といえば浮世絵でおなじみの木版画を思い浮かべる方も多いかもしれません。木版画は、木の板を彫刻刀で彫りますね。彫ったところは凹となりインクが付かないので、刷ると白い部分になります。逆に、彫らずに残したところは凸となりインクが付きますので、刷ると紙にその部分のインクが移ります。
一方、リトグラフは原版を彫りません。平らな版に化学処理をすることで、インクが付く部分と付かない部分を作ります。
仕組みと作り方
リトグラフは、油と水が混ざらない性質と化学反応を利用して刷られます。油性のリトクレヨンや絵具で原版に直接絵を描き、その後、薬品を用いて絵の部分が版に定着するよう処理をします。こうして、インクが付く部分と付かない部分が生まれます。制作には高い技術と多くの手間がかかります。
石版と版材について
リトグラフの「リト」はギリシャ語の lithos(石)、「グラフ」は graphia(描く、記す)に由来しています。つまり「石に描く」ということです。ただし、その石は何でもいいわけではありません。リトグラフに使われるのは石灰岩です。
石灰岩には無数の微細な孔があり、水分や油脂を受け入れやすい性質があります。また、薬品との化学反応を利用して描いた部分を定着させるのにも適しています。
伝統的なリトグラフではヨーロッパの石が使われます。代表的なのは、南ドイツ・ゾルンホーフェン産の石です。18世紀末、ドイツ人アロイス・ゼネフェルダーがこの石灰岩を用いてリトグラフの技法を発展させたことでも知られています。
現在では、石灰岩以外の版材も使われるようになりました。石は重く、高価で、研磨にも手間がかかるため、亜鉛版やアルミ版などの金属版が一般的に用いられています。
リトグラフの特徴
白黒ではない、多色刷りのリトグラフでは、色の数だけ版が必要になります。たとえば15色使う作品なら、15版を用意し、それぞれを正確に重ねながら刷っていきます。こうして生まれる画面は、明るくカラフルで、装飾性にも富んだものになります。
リトクレヨンや絵具で原版に直接絵を描き版を作るので、筆致や線のニュアンスを活かしやすいのが特徴です。
シャガールやピカソをはじめ、リトグラフに積極的に取り組んだ世界の巨匠も多いため、洋画のイメージが強いかもしれません。しかし実際には、東山魁夷や平山郁夫などの日本画家の作品もあり、表現の幅の広い技法であることがうかがえます。
限定数とエディション番号
リトグラフは、ひとつの作品で制作される枚数が限られています。何枚刷るかは通常作家側が決め、50部程度のものから300部前後のものまでさまざまですが、いずれも限定制作です。刷りが終了すると、原版上のデッサンは消されるのが一般的です。
完成した作品は一枚ずつ品質が確かめられ、作家が認めた作品にエディション番号が記入されます。例えば、「25/300」のように、分数で表記される場合は、分母の「300」が限定数、分子の「25」が刷り番号です。
ただし、この刷り番号は必ずしも刷られた順番を示すものではありません。また、若い番号ほど刷りの質が高いというわけでもありません。
EA・AP・HCについて
作家は制作料を版元から受け取るとともに、一定数の作品を保有できます。これが作家保存版で、通常は総刷り数の約5%前後です。
この作家保存版には、限定番号の代わりに EAまたはEpreuve d' Artiste (エプルーブ・ダルティスト/フランス語)と記入され一般にEA版と呼ばれています。EAではなくAPと記入されることもあり、これは Artist's Proof(アーティスツ・プルーフ/英語)の略です。
版元で通常のエディション作品が売り切れたあと、EA版やAP版が市場に出ることもあります。ただし、EA版やAP版だからといって、品質や価値が通常の限定番号入り作品より高いわけではありません。「EA版は価値がある」として販売している業者もあると聞きますが、日本ぶっくあーとでは、直筆サイン入りリトグラフにおいてEA版と限定番号版で価格に差をつけて販売したことは一度もありません。
また、HC と記された作品もあります。これは Hors Commerce (オル・コメルス/フランス語)の略で、非売品を意味します。美術館用の見本などとして刷られるものですが、こちらも市場に出ることがあり、通常の限定作品と品質や価値に本質的な差はありません。
飾る際の注意点
リトグラフを美しい状態で長く楽しむためには、飾る環境にも気を配ると安心です。直射日光や強い光は色あせの原因になり、多湿の環境ではシミやカビが発生しやすくなります。
強い日差しが差し込む場所や湿気のこもりやすい場所を避けて飾るのがおすすめです。額装されていても、急激な温度・湿度の変化は作品に負担をかけます。エアコンの風や加湿器の蒸気が直接当たらないよう注意しましょう。
まとめ
リトグラフは、油と水が混ざらない性質と化学処理を利用して刷られる版画技法です。彫るのではなく描くように制作できるため、柔らかな線や豊かな色彩表現を活かしやすいのが大きな特徴です。
油彩画とは異なる軽やかさがあり、大型作品でも圧迫感が出にくいのも魅力です。壁面に取り入れやすく、廊下や階段など、限られた空間でもお楽しみいただけます。風景や街並みの作品を飾れば、窓がひとつ増えたような視覚的効果も感じられます。
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参考動画
リトグラフ制作の工程をご覧になりたい方は、こちらをご参考になさってください。↓
エスタンプとは
エスタンプとは、複製版画のことです。
フランス語の estampe に由来する言葉で、もともとは版画全般を意味しましたが、近年は複製版画の意味で使われることがあります。このページでは、エスタンプの意味、オリジナル版画との違い、著作権、暮らしの中で楽しむ魅力まで分かりやすくご紹介します。
エスタンプとは
エスタンプとは、複製版画のことです。言葉の響きから「スタンプ」や「ハンコ」を連想されることがあるかもしれません。フランス語の estampe に由来し、もともと版画全般を意味する言葉でしたが、近年は複製版画の意味で使われることが多くなっています。
複製版画とは
複製版画とは、版画のための下絵からではなく、すでに存在している原画をもとに制作される版画です。油絵、水彩、グワッシュ(不透明水彩)、素描などの原画をもとに、職人が版に絵を描く、あるいは写真製版などの方法で版を作り、刷り上げます。原画を描いた画家は、この版画制作に関わらないのが一般的です。
例えば、ゴッホ「オーベルの教会」の複製リトグラフ(石版画)の場合、ゴッホ本人が版画用の版を作ったり刷ったりしたわけではありません。パリのオルセー美術館に所蔵されている「油絵の原画」をもとに、熟練の職人がゴッホ特有の複雑な色彩や筆のタッチを版画として忠実に再現します。
著作権について
複製版画を制作するには、原画の著作権を持つ作家本人、またはその権利を継承した相続人や管理者の許諾が必要です。無断で制作されたものは、正規の複製版画とは言えません。
日本でもEUでも、著作権は原則として著作者の死後70年まで保護されます。権利が存続している作品を無許可で複製することは認められず、いわゆる「海賊版」と呼ばれることもあります。
オリジナル版画との違い
画家自身が制作に関わる版画は、一般にオリジナル版画と呼ばれます。一方、エスタンプは、すでに存在する原画をもとに制作される複製版画です。
オリジナル版画と比べると、エスタンプは比較的手ごろな価格で取り入れやすく、広く普及してきました。インテリアとして楽しみやすいのも魅力です。原画に忠実に作られた作品ではありますが、オリジナル版画とは異なる位置づけの作品です。
まとめ
エスタンプとは、既存の原画をもとに制作される複製版画のことです。原画は美術館に所蔵されていたり、高額で取引されていたりなど、実際に目にする機会は限られています。エスタンプであれば、巨匠の作品を手元に置き、名画の魅力をそばで感じることができます。
名作を暮らしの中で楽しめる点は、エスタンプならではの良さです。美しい作品を日常に取り入れたい方に、ぜひおすすめしたい選択肢のひとつです。
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カーボランダムとは
カーボランダムとは、凹凸(おうとつ)による立体感を生かして制作される版画技法のひとつです。
版面に生まれるレリーフ状の起伏と、そこから生まれる重厚な絵肌が大きな特徴で、平面的な版画とは異なる迫力を楽しめます。このページでは、カーボランダムの意味や仕組み、鑑賞のポイント、飾る際の注意点まで分かりやすくご紹介します。
カーボランダムとは
カーボランダムは、版画技法のひとつです。木版画のように原版を彫るのではなく、版面に特殊な素材を盛り上げることで凹凸を作り、その起伏をそのまま刷り取ることで作品が完成します。刷り上がった画面はレリーフ状の立体感を帯び、彫刻のような存在感を感じさせます。
画家アンリ・ゲッツが従来の版画技法の難しさを克服するために研究を重ね、1960年代に完成させたことで知られています。その後、ミロやクラーヴェをはじめ、多くの作家がこの革新的な技法を用いて作品を制作しました。
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集 より
仕組みと制作方法
「カーボランダム」とは、炭素とケイ素が結合した炭化ケイ素のことを指します。非常に硬く、熱や薬品にも強い性質をもつため、独特のざらつきや起伏を生み出す素材として用いられます。
この素材を細粒状にし、プラスチック樹脂などと混ぜて金属版やプレキシガラスなどの版面に塗布します。乾燥するとその部分は硬く、デコボコとしたレリーフ状になるため、立体的な版の制作が可能となります。
刷る際は、プレス機で非常に強い力を加えて紙を抑え込みます。プレス時に凹凸で破れないような厚手の紙が用いられ、刷る際には紙をあらかじめ湿らせて柔らかくします。
インクが凸部だけでなく凹部にも入り込むことで色の濃淡が生まれ、用紙には原版のかたちどおりの凹凸(おうとつ)がつき、カーボランダム特有の表現となります。
さらに、刷り上がったあとに手彩色を加えたり、コラージュを施したり、プレスと彩色を何度も重ねて仕上げたりすることもあります。こうした工程の違いによって、作家や作品ごとのオリジナリティーが生み出されます。
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集 より
鑑賞ポイント
カーボランダム版画の最大の魅力は、凹凸による立体感と色の濃淡です。こうした変化に富んだ表現によって、版画でありながら彫刻のような存在感まで感じられます。
また、光の当たり方によって陰影が際立ち、正面から見たときと斜めから見たときとで印象が異なるのも特徴です。
飾る際の注意点
カーボランダム版画を美しい状態で長く楽しむためには、飾る環境にも気を配ると安心です。直射日光や強い光は色あせの原因になり、多湿の環境ではシミやカビが発生しやすくなります。強い日差しが差し込む場所や湿気のこもりやすい場所を避けて飾るのがおすすめです。
画面の凹凸そのものが魅力であるため、表面に強く触れたり擦れたりしないよう注意が必要です。額装された状態で飾ることで保護性が高まり、作品もより美しく引き立ちます。額装されていても、急激な温度・湿度の変化は作品に負担をかけます。エアコンの風や加湿器の蒸気が直接当たらないよう注意しましょう。
まとめ
カーボランダムとは、版面に生まれる凹凸を生かして刷り上げる版画技法で、レリーフ状の立体感ある作品が生み出されるのが特徴です。
画像では質感が伝わりにくいのが惜しまれる点ですが、実物はデコボコとした部分につい手をふれたくなるような肌合いです。小ぶりな作品でも空間の中で強い存在感を放ち、玄関や書斎、リビングなどを印象的に飾ることができるのも魅力です。
彫刻のような厚みや迫力は、平面的な版画とは違う味わいです。豊かな質感をぜひゆっくりお楽しみください。
参考
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集
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ジクレとは
ジクレ(ジークレー)は、最新のデジタル技術を用いた高精細な版画技法です。
従来の版画のように「版」を作らず、キャンバスや版画用紙にインクをダイレクトに吹き付けて制作されます。原画の色彩や雰囲気を可能な限り忠実に再現することができる技法です。このページでは、ジクレの意味や特徴、従来の版画との違い、美術館や文化財の分野での役割などについて分かりやすくご紹介します。
ジクレとは
ジクレは、最新のコンピュータ技術を駆使して作られるハイテクな版画です。高精細なインクジェット印刷によって制作される美術複製技法で、キャンバスや版画用紙に、インクが直接吹き付けられることで、高精細な画面が再現されます。ジクレの語源であるgicleeはフランス語でインクのふきつけを意味しています。
1980年代後半から90年代にかけて登場した、比較的新しい技法で、リトグラフや木版画のように物理的な「版」を作らず、デジタルデータをもとに制作されるのが最大の特徴です。
仕組みと制作方法
もとになる原画を高解像度のスキャナーで読み取るか、専用カメラで撮影して緻密なデジタルデータを作成します。その後、色彩の専門家(プリンティング・ディレクター)が原画と見比べながら、モニター上で細かな色の調整を行います。出力には、美術作品専用の大型インクジェットプリンターが使用されます。
「プリンターで印刷する」と聞くと、一般的なポスターを想像されるかもしれませんが、ジクレは美術作品としての再現性を重視して制作されるため、一般的なポスター印刷とは目的や仕上がりが異なります。
ジクレに使われるのは、耐光性に配慮した顔料インクです。非常に微細なインク粒子のため、数百万色ともいわれる豊かな色彩表現が可能で、水彩画の淡いにじみや油彩画の複雑な混色、さらには作家の筆遣いまで、繊細に再現しやすいのが特徴です。
その圧倒的な再現力と、保存性にも配慮した仕上がりで、国宝や文化財の複製や現代作家の作品制作にも活用される技術です。
美術館や文化財分野でも活用される高精細再現技術
高精細なデジタル複製技術は、原画にできるだけ近い表現を目指す方法として、美術館や文化財の分野でも重要な役割を担っています。国宝の複製や、美術館における展示・研究・教育を支える手段として活用されることもあり、その高い再現性が評価されています。
作品によって見た目や価格が違う理由
ジクレ作品を比較した際、「仕上がりの質感」や「価格」に大きな差があることに驚かれるかもしれません。同じ原画をもとにしたジクレであっても、以下のようなさまざまな要因によって、作品の仕上がりや完成度には大きな差が生まれます。
仕上がり(質感)の違い
ジクレは通常、表面がさらりと乾燥したマットな質感に仕上がります。しかし、作品によってはここからさらに手が加えられます。例えば、シルクスクリーンで透明のニスをかけたり、その他の特殊加工を施したりすることで、画面に立体感や光沢を与えます。このように他の技法を併用することで、ジクレ特有の精細さに加え、版画ならではの豊かな質感が生まれます。
品質と価格差を生む主な要因
ジクレの品質と価格は、制作にかける手間と素材の質に比例します。
- 原画データの精細さ:どれほど高性能なスキャナーやカメラで原画を捉えているか。
- プリンターとインクの種類:美術品専用の多色顔料インクを使用しているか。
- 支持体(土台):インクを吹き付ける対象が、最高級の油彩用キャンバスか、あるいは長期保存に適した版画用紙か。
- 併用される技法:シルクスクリーンや手彩色など、職人の手仕事がどれだけ加わっているか。
例:フェルメール「真珠の耳飾りの少女」ジクレによる複製画の場合。美術館・寺院の所蔵品の修復・復刻を手がけてきた、90有余年の伝統を持つ大塚巧藝社制作の作品は、マウリッツハイス美術館の詳細データに基づき、原画の持つ臨場感やクラックまでもリアルに再現されています。油絵用の布地キャンバスに顔料を吹きつけ、さらにその上から純度の高い天然ラピスラズリを熟練の絵師が随所に着彩することで、フェルメール・ブルーも再現されています。
まとめ
ジクレとは、デジタル技術と熟練の職人の感性が融合して生まれた複製技法です。版を使わずインクを直接吹き付けて制作することで、原画のニュアンスを余すところなく再現できるのが特徴です。
美術館に飾られているような名画の魅力を、お手元で楽しめるのもジクレ作品ならではです。世界の名画を暮らしの中に取り入れる、そんな豊かな楽しみ方を叶えてくれる技法と言えるでしょう。
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シルクスクリーンとは
シルクスクリーンとは、版にあけた孔(あな)を通してインクを刷り出す「孔版(こうはん)」と呼ばれる版画技法のひとつです。
スクリーンと呼ばれる細かな網を用いて、インクが通る部分と通らない部分のある版を作り、絵柄を刷ります。このページでは、シルクスクリーンの意味や仕組み、鑑賞のポイント、飾る際の注意点まで分かりやすくご紹介します。
シルクスクリーンとは
シルクスクリーンは、目の細かな網を張った版を使って絵柄を刷る技法です。かつては絹の網を使っていたことからこの名前が付きましたが、現在ではナイロンやポリエステルなどの化学繊維も一般的に用いられています。
スクリーンには、インクを通す部分と通さない部分を作ります。インクが通る部分だけが紙や布に刷り出されるため、版を彫る木版画などとは異なる仕組みの技法です。
絵柄が左右反転せず、そのままの形で刷ることができるのも特徴のひとつです。
謄写版(とうしゃばん)や家庭用印刷機「プリントゴッコ」をご存じの方は、原理をイメージしていただきやすいかもしれません。シルクスクリーンはそれらを発展させたもので、美術作品として高い完成度を持つ版画が制作されます。
アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインなどのポップアートで広く知られる一方、日本画家や洋画家の版画作品、名画の複製版画、リトグラフとの併用作品などにも用いられます。作家の表現意図や制作方法によって、鮮烈な色彩の作品から、やわらかな階調をもつ作品まで、幅広い表現が可能です。
仕組みと制作方法
木枠や金属枠にスクリーン(細かな網)を張ります。そこに感光剤などを使って、インクを通さない部分(目止め)を作ります。目止めしたところ以外はインクが通り、これが版となります。
刷る際には、版の上に粘性のあるインクを置き、ゴム製のヘラ(スクィージ)で押し出すようにしてインクを通します。スクリーンの孔を通過したインクが、その下に置かれた紙やキャンバスに転写され、絵柄が現れます。
多色作品の場合は、色ごとに版を作り、位置を正確に合わせながら重ね刷りを行います。この工程によって、鮮やかで発色のよい画面が生まれます。
鑑賞ポイント
シルクスクリーン版画の魅力は、発色の良さと色面の美しさにあります。インクをしっかりと刷り出せるため、色が比較的はっきりと現れ、輪郭の明快な表現や均一な色面を作りやすい技法です。
リトグラフやジクレ、手彩色などと併用される作品では、シルクスクリーンによる色面や質感が、他の技法と組み合わさって画面に奥行きや装飾性を与えます。
飾る際の注意点
シルクスクリーン版画を長く美しく楽しむためには、飾る環境にも配慮が必要です。直射日光や強い光は退色の原因となるため、できるだけ避けるようにしましょう。
また、高温多湿の環境では紙の劣化やシミの原因となることがあります。エアコンの風や加湿器の蒸気が直接当たらない場所に飾ると安心です。
まとめ
シルクスクリーンとは、スクリーンの孔を通してインクを刷り出す孔版の版画技法です。
鮮やかな発色や明快な色面を生かした作品だけでなく、作家や制作方法によっては、繊細な表現にも用いられます。
色の美しさ、版の重なり、画面の質感に目を向けながら、シルクスクリーン版画ならではの魅力をぜひお楽しみください。
文責
nihonbookart-mayumi








