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美術品まめ知識

カーボランダムとは

カーボランダムとは、凹凸(おうとつ)による立体感を生かして制作される版画技法のひとつです。

版面に生まれるレリーフ状の起伏と、そこから生まれる重厚な絵肌が大きな特徴で、平面的な版画とは異なる迫力を楽しめます。このページでは、カーボランダムの意味や仕組み、鑑賞のポイント、飾る際の注意点まで分かりやすくご紹介します。

カーボランダムとは

カーボランダムは、版画技法のひとつです。木版画のように原版を彫るのではなく、版面に特殊な素材を盛り上げることで凹凸を作り、その起伏をそのまま刷り取ることで作品が完成します。刷り上がった画面はレリーフ状の立体感を帯び、彫刻のような存在感を感じさせます。

画家アンリ・ゲッツが従来の版画技法の難しさを克服するために研究を重ね、1960年代に完成させたことで知られています。その後、ミロやクラーヴェをはじめ、多くの作家がこの革新的な技法を用いて作品を制作しました。

カーボランダム版画の版洗浄の様子
写真:カーボランダム版画の版洗浄(ブリッソン画伯)
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集 より

仕組みと制作方法

「カーボランダム」とは、炭素とケイ素が結合した炭化ケイ素のことを指します。非常に硬く、熱や薬品にも強い性質をもつため、独特のざらつきや起伏を生み出す素材として用いられます。

この素材を細粒状にし、プラスチック樹脂などと混ぜて金属版やプレキシガラスなどの版面に塗布します。乾燥するとその部分は硬く、デコボコとしたレリーフ状になるため、立体的な版の制作が可能となります。

刷る際は、プレス機で非常に強い力を加えて紙を抑え込みます。プレス時に凹凸で破れないような厚手の紙が用いられ、刷る際には紙をあらかじめ湿らせて柔らかくします。

インクが凸部だけでなく凹部にも入り込むことで色の濃淡が生まれ、用紙には原版のかたちどおりの凹凸(おうとつ)がつき、カーボランダム特有の表現となります。

さらに、刷り上がったあとに手彩色を加えたり、コラージュを施したり、プレスと彩色を何度も重ねて仕上げたりすることもあります。こうした工程の違いによって、作家や作品ごとのオリジナリティーが生み出されます。

カーボランダム版画の刷りの様子
写真:カーボランダム版画の刷り(ブリッソン画伯)
「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集 より

鑑賞ポイント

カーボランダム版画の最大の魅力は、凹凸による立体感と色の濃淡です。こうした変化に富んだ表現によって、版画でありながら彫刻のような存在感まで感じられます。

また、光の当たり方によって陰影が際立ち、正面から見たときと斜めから見たときとで印象が異なるのも特徴です。

飾る際の注意点

カーボランダム版画を美しい状態で長く楽しむためには、飾る環境にも気を配ると安心です。直射日光や強い光は色あせの原因になり、多湿の環境ではシミやカビが発生しやすくなります。強い日差しが差し込む場所や湿気のこもりやすい場所を避けて飾るのがおすすめです。

画面の凹凸そのものが魅力であるため、表面に強く触れたり擦れたりしないよう注意が必要です。額装された状態で飾ることで保護性が高まり、作品もより美しく引き立ちます。額装されていても、急激な温度・湿度の変化は作品に負担をかけます。エアコンの風や加湿器の蒸気が直接当たらないよう注意しましょう。

まとめ

カーボランダムとは、版面に生まれる凹凸を生かして刷り上げる版画技法で、レリーフ状の立体感ある作品が生み出されるのが特徴です。

画像では質感が伝わりにくいのが惜しまれる点ですが、実物はデコボコとした部分につい手をふれたくなるような肌合いです。小ぶりな作品でも空間の中で強い存在感を放ち、玄関や書斎、リビングなどを印象的に飾ることができるのも魅力です。

彫刻のような厚みや迫力は、平面的な版画とは違う味わいです。豊かな質感をぜひゆっくりお楽しみください。

参考

「ESTAMPEの技法」 ビジョン・ヌーベル社 編集

文責

nihonbookart-mayumi

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