美術品まめ知識
油彩画とは
油彩画とは、油を用いた絵具を使って描かれた絵画です。
「油絵」と呼ばれることも多く、鮮やかな発色、豊かな絵肌、塗り重ねによる奥行きある表現が大きな魅力です。このページでは、特徴や歴史、鑑賞のポイント、飾る場所の注意点など、分かりやすくご紹介します。
油彩画と油絵の違い
油彩画と油絵は、一般にはほぼ同じ意味で使われます。美術の分野では「油彩画」、日常的には「油絵(あぶらえ)」と呼ばれることが多いです。
特徴
水彩は水で絵具を溶きますが、油彩は油を用います。油彩画は、色のもととなる顔料を「乾く油(乾性油)」で練り、必要に応じて溶き油で薄めながら描き進められます。
顔料は、岩石や鉱物などを細かく砕いた粉末のほか、化学的に合成されたものもあります。混ぜ合わせるのには、亜麻仁(あまに)・くるみ・けしなど、植物の種から採取された油が一般的に使われます。これらの油と顔料は光の通り方が良く似ているため、光が絵具の層を通り抜け、透明感のある澄んだ色が生まれます。
水彩は水が蒸発して乾きますが、乾性油は空気中の酸素と反応してゆっくりと固まります。この乾燥の遅さが、色の濃淡や明暗を滑らかに描き込むことを可能にします。透明感から重厚感、緻密な描き込みから大胆な筆致まで、幅広い表現ができるのが油彩画の特徴です。
歴史
油彩画は、亜麻仁油の産地だったフランドル地方(現在のベルギー)で大きく発展し、画家ヤン・ファン・エイク(1390~1441)が兄のフーベルトとともに完成度を高めたと言われています。
顔料に卵を混ぜて描くテンペラ画に比べると、油彩画は乾燥に時間がかかります。その一方で、色の重なりを活かした表現にすぐれ、透明感のある層や豊かなグラデーションを生み出しやすいことから、15世紀以降のヨーロッパで広く普及しました。
日本での油彩画の歴史は浅く、本格的に知られるようになったのは19世紀、明治初期のことです。鎖国体制下の日本では海外からの情報が厳しく制限されていたため、西洋の油彩技法が広く普及するには時間がかかりました。
開国後まもなく、イギリスの報道画家として来日したチャールズ・ワーグマン(1832-91)に、五姓田義松(ごせだ よしまつ)が入門して油彩画を学び始めたのが1865年、高橋由一(たかはし ゆいち)が弟子入りしたのがその翌年でした。
海を渡ってもたらされた油彩画は、やがて「洋画(西洋画)」とも呼ばれ、それまで日本で独自に培われてきた伝統的な画法や素材を用いた作品と区別されるようになりました。
油彩画の鑑賞のポイント
油彩画の鑑賞ポイントの一つとして、その作品がもつ肌合いがあげられます。これはマチエールとよばれるもので、画家がとても大切にするものです。絵肌ともいわれます。
厚く盛り上げて力強い立体感を見せる作品もあれば、平滑に仕上げて透き通るような光を感じさせる作品もあります。自然光や照明の当たり方によって見え方が変わるのも、油彩画のおもしろさです。
さらに、油彩画は布地のキャンバス布(おもに麻や木綿)だけでなく、板などに描かれることもあります。絵を描く土台を「支持体」と言いますが、その素材の違いによる印象の変化も鑑賞の楽しみです。
油彩画を飾る際の注意点
油彩画を美しい状態で長く楽しむためには、飾る環境にも気を配ると安心です。油彩画は耐久性の高い芸術作品ですが、長い年月の中で絵具に割れやヒビ、縮みが生じることがあります。
これは油絵具の乾燥過程の性質や、温度・湿度の変化によるキャンバス地の伸縮などが主な要因です。そのため、極端な乾燥や湿気を避け、エアコンの風が直接当たる場所や直射日光の当たる場所は避けて飾るのがおすすめです。
なお、経年変化による細かなヒビは、油彩画ならではの歴史的な味わいとして愛される側面もあります。
まとめ
油彩画は、色の重なりや絵肌の変化を通して、多彩な表現を楽しめる絵画です。
技法の背景や見どころを知り、身近な場所に飾って愛着を深めることで、楽しみはいっそう広がります。油彩画ならではの魅力を、ぜひゆっくり味わってみてください。
参考文献
「岩波 西洋美術用語辞典」 益田朋幸・喜多崎親 編著、岩波書店
「カラー版 絵画表現のしくみ」 森田恒之 監修、美術出版社
「美術品販売手引書」 ほるぷ営業企画部 編集、ビジョン・ヌーベル社広報部 監修
文責
nihonbookart-mayumi








