森の静けさに包まれた、ペイネの恋人たち
ひざまずいて恋人をやさしく抱き寄せながら、そっとささやく青年。幾重にも連なる木々や、森の奥へと続く道、空を飛ぶ白い鳥たちが、ふたりの時間を詩情豊かに引き立てます。
画面下部には、恋人たちの遊び心を感じさせるフランス語のレジャンドが添えられています。ペイネらしいユーモアと物語性が広がる、やわらかな色彩と繊細な描線が魅力の直筆サイン入りリトグラフ、EA版(作家保存版)です。
画面下部に添えられた詩的なレジャンド
画面下部には、フランス語のレジャンドが筆記体風の文字で添えられています。「何をして遊ぶ? “愛してる”の花びら占い? 心を奪う恋の遊び? それとも小さな虫がのぼる遊び?」というように、恋人同士の甘く無邪気なやり取りを思わせる言葉です。
花びらを一枚ずつ摘みながら占う遊び、心を奪い合うような恋の遊び、そして指先を小さな虫に見立てたくすぐり遊び。子どものころの無邪気な遊びを連想させる言葉が、ペイネの世界では、恋人たちの親密な時間へと重ねられています。
画面の中には、木に刻まれた文字や、カタツムリ、ふくろうなどの小さなモチーフも描かれています。静かな森の情景の中に、ペイネらしい遊び心と小さな物語がそっと織り込まれています。
絵と言葉、細部のモチーフが響き合い、森の中でささやき合うふたりの時間が、やさしく印象づけられている作品です。
作品仕様
- 技法
- リトグラフ
- 用紙
- アルシュ紙
- 画寸
- タテ 46 × ヨコ 34 cm
- 額寸
- タテ 71.5 × ヨコ 59.3 cm
- サインなど
- 作家直筆サインあり
- 証明
- 画面左下のエディション番号部分にフランス著作権協会承認エンボスあり
- 添え書き(レジャンド)
- 画面下部にあり(筆記体風表記:A quoi on joue? A effeuiller "je t'aime", à "coeur volé" ou à la petite bête qui monte?)
- 限定
- EA35部
- 状態
- 良
- 付属品
- 布袋、額縁(作家名・生没年が刻印されたプレート付)
- モチーフ
- 人物、恋人、小鳥
日本ぶっくあーと秘蔵コレクション
日本ぶっくあーとでは、レイモン・ペイネの芸術を多くの方にご紹介したいという思いから、作品の収集に力を注いできました。
本作品は、一般的に流通している、人から人へと渡り歩いた作品とは異なり、美術館収蔵を前提に長年にわたり大切に保管してきた、日本ぶっくあーとの秘蔵コレクションです。
レイモン・ペイネ (Raymond Peynet) 1908-1999
経歴と「恋人たち」の誕生
1908年、フランス・パリに生まれる。1922年、14歳で広告デザイナーを志してパリの産業装飾美術学校に入学。在学中からその才覚を現し、数多くの新聞や雑誌に挿絵や風刺画を発表。イラストレーターとしてのキャリアを開始。
1942年、34歳の時にフランス中部ヴァランスの野外音楽堂(キオスク)から着想を得て、後に世界中で愛されることとなる「恋人たち」のモチーフが誕生。雑誌に発表し、「ペイネの恋人たち」として、戦時下の閉塞感の中にあった人々の心に寄り添い、世界的な名声を博すこととなった。
国際的な評価と日本との絆
1950年代から60年代にかけては、国際ユーモア賞や国際漫画祭グランプリを受賞するなど、ヨーロッパを代表するロマンティック・アーティストとしての地位を確立。1985年、78歳の時にはフランス郵政の依頼によりバレンタインデーの記念切手をデザインし、国民的作家としての評価を不動のものとした。
日本との縁も深く、1995年には長野県軽井沢に「ペイネ美術館」が開館。オープン記念には87歳のペイネ夫妻が来日し、大きな話題を呼んだ。また、東京・日本橋三越本店で開催された個展には秋篠宮殿下がご来訪された。
画風と普遍的なメッセージ
ペイネの作品は、軽やかな線描と余白を活かした構図、そして「静かな幸福感」にあふれる世界観が特徴。戦争や社会不安の時代にあっても「愛」と「平和」をテーマとし、日常に寄り添う誠実で穏やかな愛のかたちを描き続けた。没後もその普遍的なメッセージは色褪せることなく、高い物語性と詩情あふれる作品が世界中で愛されており、現在「恋人たち」が生まれるきっかけとなった野外音楽堂は「ペイネ・キオスク」の名でフランスの歴史的建造物にも指定されている。
主な作品収蔵先
ペイネ美術館(フランス・アンティーブ)、ペイネ美術館(軽井沢タリアセン内)など。









