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大矢邦昭

ローマ法王に謁見、作品献上について

大矢邦昭 おおやくにあき ローマ法王に作品献上



登場するお名前は敬称を略させていただきました。
尚、ローマ法王のお名前はスペイン語読みで書かれています。




ローマ法王に謁見(えっけん)、作品献上


   1998年4月29日、バチカン市国サン・ピエトロ広場にてローマ法王に謁見し「エンカルナシオン修道院(アビラ)」油彩・F20号を直接献上しました。ローマ法王は、歴代で二番目に在位の長いファン・パブロ2世(1920-2005 日本語ではヨハネ・パウロ2世)でした。当初は謁見ホールで式典が行われる予定でしたが、世界各国から多くの信者が参拝することが分かり野外のサン・ピエトロ広場に変更され、ミサの最中に謁見式典を執り行なうことになりました。

   ローマ法王に謁見して作品を献上する段取りをしてくれたのは、中世より続くマルタ騎士団のマドリード会長アントニオ・デル・ロサール・イ・グランダ Antonio del Rosal y Granda、サーレス侯爵 Marque's de Salesとマドリード駐在のラジョス・カダ Lajos Kadaバチカン大使でした。当時はファン・パブロ2世が歴代の法王の中でも特に人望を集めていた為、謁見はほぼ不可能な状態でした。作品献上は、ローマ法王を介さないバチカン博物館へならば可能性がある状態でした。ところが私の場合、私自身が何の苦労もせずにいとも簡単に実現してしまい異例のことでした。更に、私の家内と息子がお供に付き三人で謁見したのも、バチカンの関係者に言わせると異例のことだそうです。

   献上作品「エンカルナシオン修道院(アビラ)」は、私が引かれるサンタ・テレサを題材にしたものです。ファン・パブロ2世はスペイン語にも長けていましたが、それは信奉するサンタ・テレサの手紙を原文で読みたい為に努力した結果によるものです。又、法王自身の行動は聖女を踏襲したもので、その信奉の深さを裏付けしています。作品を手渡しする際に聖女についての話をしたところ法王の眼が輝き、やはりサンタ・テレサを信奉しているんだなと確信した次第でした。そのことによりサンタ・テレサを仲立ちとして、ファン・パブロ2世と私とのつながりがあったことを認識しました。

   式典のあったサン・ピエトロ広場では、ローマ法王やほかの枢機卿(すうききょう)が座される最上段に特別謁見者の席が設けられましたが、私の席は法王の横の1番の席で家内と息子が2・3番と続き、この待遇も尋常ではないと感じました。このバチカン訪問については、全てが感動的なものでした。

   バチカン博物・美術館 Musei e Gallerie del Vaticanoでは、前田青邨(せいそん)や平山郁夫の作品が収蔵されている民俗資料館を訪ねました。単純に私の作品もそこに収蔵されると考えて、献上後の経過を知りたいと思ってのことでした。ここでは、ロベルト・ザッノーリ Roberto Zagnoli館長とエステール・コンソーレ Ester Console女史が出迎えてくれました。エステール女史は東洋部門担当で民族資料館のことを詳しく教えてくれ、又、館内も案内されましたが、私の作品は現代美術館に収蔵されると思うとのことでした。一言にバチカン博物・美術館と言ってもその傘下に現代美術館があり、民族資料館その他があり多様です。私が訪れた時は、前田青邨・平山郁夫両人の作品は民族資料館に納められていました。
(注:前田青邨「細川ガラシア夫人像」、平山郁夫「古代東方伝教者」。青邨の弟子である平山が、青邨の代理として1974年にバチカンを訪問し青邨の作品を寄贈。このとき平山の作品も併せて寄贈した。時の法王はファン・パブロ2世の、前の前のパウロ6世。)

  後に分かったことですが、自作を歴代のローマ法王に謁見して献上した日本人作家は私で三人目だそうです。結局、ファン・パブロ2世に正式に謁見して自作を献上した日本人作家は私が唯一と言うことになります。 人種を問わず、ローマ法王に作品を献上したと言う話を時々聞きますが、詳しく聞いてみると私とは状況が違うようです。団体謁見をした際に、団体の贈物の一つとしてバチカンに寄贈した話であったり、又、ファン・パブロ2世が若い頃はサン・ピエトロ広場での毎週のミサの時に団体参列者に良く近づいたことがありましたが、その時に持参した作品を献上したというハプニング的に起こった話であったりします。

   私の作品はファン・パブロ2世の所有物となっています。法王の逝去後、遺産の行く先を決められていますが、献上品の数が莫大なため決定するまでにはかなりの年月がかかりそうです。 

  2012年7月31日 マドリードにて  大矢 邦昭


特別展 大矢邦昭
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